手のふるえとは

手足や顔にふるえが見られるという場合、パーキンソン病と本態性振戦が考えられます。パーキンソン病は、安静時(体が止まっているとき)でも手足がふるえる、歩行時は前傾姿勢になって、歩幅が狭く、手の振りが無くなり、唇、舌、顎など顔においてもふるえがみられることがあります。排尿障害や認知症も起きやすいと言われています。
パーキンソン病の発症メカニズムですが、脳の黒質という部分が変性することで、そこでつくられる神経伝達物質の一種ドーパミンの量が低下、それによって黒質からの情報伝達経路がうまく働かなくなることで発症すると考えられています。つまり脳の神経に異常が起き、体の末端にまで脳の指令が行き届かなくなることで、動作がぎこちなく、不自然になるのです。なお60代で発症する患者様が多く、これらの症状が数年かけて徐々に進行していくのも特徴です。

本態性振戦とは

本態性振戦とは、はっきりした原因がないにもかかわらず、手や頭などが不随意に(意のままにならずに)震える病気のことです。基本的にふるえ以外の症状はありません。多くの場合、安静にしているときにはふるえは生じませんが、何らかの動作をしている最中や、ある一定の姿勢をとったときにふるえが現れます。病状が悪化すると日常生活に支障をきたしたり精神的な苦痛となったりするケースも少なくありません。ただ症状がひどくなっても手足が麻痺するようなことはありません。
本態性振戦の有病率は報告によってばらつきが見られますが、およそ人口の2.5~10%とされています。若年での発症も見られるものの、高齢者に多い傾向にあり、40 歳以上では4%、65 歳以上では5~14%以上で本態性振戦が認められたとの報告があります。症状は何らかの動作をしたり、ある一定の姿勢をとったりするときに手や指、頭、などが小刻み(1秒間に4~12回)にリズミカルに震える“振戦”が現れるのが特徴です。また、振戦は精神的な緊張によって増強します。一方、お酒を飲むとふるえが軽くなることもあります。症状が強くなると、うまく字が書けない、箸が使えない、飲み物をこぼしてしまう、といった日常生活に支障をきたすような動作の障害や、声が震えるなど人前に出るのが苦痛になるような精神的ダメージを生じやすくなります。振戦は脳出血や脳梗塞などによって引き起こされることもあるため、頭部CT検査や頭部MRI検査が行われることがあります。本態性振戦の症状が軽い場合においては、治療が必要になることは少ないですが、日常生活や仕事への支障が出てきたり、精神的な苦痛によって活動性や社会性が低下したりするような場合には治療が考慮されます。治療では、まず薬物療法を行います。第一選択となる薬は “β遮断薬”です*。しかし、気管支喘息などがある場合はβ遮断薬を服用することはできません。β遮断薬に効果がないケースや使用できないケースでは、抗てんかん薬であるプリミドンや抗不安薬などが用いられることもあります。

けいれんとは

けいれん(痙攣)は、自分の意志とは関係なく骨格筋が収縮してしまう発作のことを言います。けいれんが全身(全身性けいれん)で起きる場合と体の一部で起きる場合(局所性けいれん)があり、意識障害が起きることもあります。

全身性けいれん

原因不明のてんかん、症候性てんかん(脳腫瘍、脳卒中、頭部外傷、先天性疾患 など)、全身性疾患(膠原病、低血糖、電解質異常、中毒、熱性けいれん、甲状腺機能低下症などの代謝異常 等)などが原因で起きるとされ、手足の屈伸を繰り返しているように見える間代性けいれん、手足が強直してしまう強直性けいれん、これらが組み合わさった強直間代性けいれんなどの症状が現れます。

局所性けいれん

片側の手足、手足の指がけいれんするのが特徴で、てんかんの部分発作、こむら返りやしゃっくりといった症状が含まれます。
また、上記のような脳の器質的な障害、全身性疾患による場合のほか、破傷風やウイルス性脳炎などの感染症、末梢神経の異常、心因性によってけいれんが起きることもあります。けいれんを起こしている状態というのは、二次的な脳障害を進行させていることでもあるので、早めに対処する必要があります。